昨日は朝から仕事だったんで、トラムに乗って街の真ん中まで出かけました。
そのときはブリュッセル市内の公共の交通機関は普通に動いていたんですが、昼仕事を終えていったん家に戻ろうとしたときには、トラムもメトロもバスも、全部ストップ。
何やら事件が起きたことで、全線ストップしたらしく、疲れていてそれ以上歩きたくなかった私は、何もわからないまま、とにかく中央駅近くのタクシーの乗り場へ向かいました。
タクシーをつかまえようとした人は私だけでなく、いっぱい集まっていて、タクシーも「乗り合い」化していました。
こういうときはみんな譲り合ったり助け合ったり、私も同じ方面へ向かう3人と、1台のタクシーに乗り込みました。
道は渋滞していて、それほど遠くない我が家まで、けっこう時間がかかりましたが、その間タクシーの運転手さんから起こった事件について聞いたり、同乗の人たちと話をしたりしました。
こういう非常事態のときいつも生まれる連帯感が、今回も感じられました。
ブリュッセルの公共の交通機関であるSTIBのひとりが、乱暴をされて亡くなる、という事件が起きたのだそうです。
STIBのバスと普通乗用車がぶつかり、乗用車の男性が怪我をしたのだそうですが、事故処理のため現場に赴いたSTIBの係りの男性が、やはりやってきた乗用車の運転手の仲間ふたりに、殴り殺されたというのです。
亡くなった方は56歳、もう29年間STIBで働いてきた方だそうで、事件のショックは大きく、会社のトップのひとも、他の社員に、「今日はハンドルを握らないでもよい」と指導したということ。
単なるストというよりは、亡くなった方へのコンパシオン、そして喪に服す、という感じで、こういういきさつだったんで、足を奪われ予定が狂った人々も、不満をいうようなところは見かけませんでした。
死ぬまで殴るなんてなんということだろう、というショックの方が大きかったと思います。
その夕方、レストランの仕事の手伝いに出かけたのですが、そこで働く日本人の方たちと、ちょっとした論争になってしまいました。
というのも、彼らは、「一人職員が亡くなっただけで、全線ストップするなんて、ベルギー人はほんとうにおかしい」というのです。
私はそうは思わないので、それで論争。
もちろんケンカをしたわけではありませんが、絶対分かり合えないくらいの壁を感じました。
私は、こういう事件のときに、全線をストップしてマニフェストする、ということで、そういったアグレッションが減るとは思わないものの、少なくとも事件を知らしめるためのもっともわかりやすい方法だと思うし、同僚の人々がショックのあまり働く気持ちになれない、というのも理解できます。
足を奪われて困る、という人もいるでしょうが、前述したように、こういうときに生まれる「連帯感」により、不便はあっても解決はできます。
そういうと、「あなたは言葉がわかるから。言葉がわからないと、何が起こったかもわからないまま戸惑うばかりで、問題解決の道もないし、腹が立つ」と言うのです。
「ここに何年暮らしているの?」と聞くと、ひとりは「18年」との返答。
18年暮らしていても、この国の社会に溶け込むことができないでいる、そのことの方が問題じゃないか、と喉まで出かけたけど、そんなこと言うと角が立つ、と思い、ぐっと飲み込みましたが・・・。