アニェス・ヴァルダの講演


今日の仕事は午前中だけだったので、夕方は以前に申し込んでいた、王立アカデミーでの映画監督アニェス・ヴァルダの講演を聞きに行ってきました。

実は私、彼女の制作した映画は、まだ一つも見たことないのだけど。

(今私の住んでいるブリュッセルはイクセル区の美術館で、彼女の展覧会が開かれています。
http://www.museedixelles.irisnet.be/expositions/expositions-en-cours-1/agnes-varda-patates-cie
彼女はイクセル生まれなので。
これもおもしろそうです。時間を作って行ってこようっと。)

これまで彼女の作った映画のいくつかを少しずつ見ながら彼女の話を聞く、というやり方でした。
ユーモアたっぷりで、なかなかおもしろい話でした。

実は、アニェス・ヴァルダの講演というタイトルにしたものの、今日忘れないうちに記したいな、と思ったことは、彼女の話自体ではなく、話を聞きに来た人々を見ながら思ったことです。

これもベルギーに暮らしていてうれしいことのひとつなのだけど、王立アカデミーでは定期的に、その分野の専門家や学者さんたちの講演や討論会などをやり、それを聞きに行くのは無料、申し込みさえすればよいのです。
理科学系のことから人文科学系のことに至るまで、その内容は幅広く、そのクオリティも高い。

私はいつもプログラムをチェックして、興味のある話は、仕事その他で身動きができないとき以外は、なるべく足を運ぶことにしています。

今日は、同時に別の教室で、「原子爆弾のベルギー史、カタンガからヒロシマへ」という講演もあり(日本に落とされた原爆に使われたウラニウムは、ベルギー領コンゴのものでした)、そちらにも心惹かれたのだけど、結局アニェス・ヴァルダの方を選んだ次第。

プログラムを見ると、今ヨーロッパにおける大きなテーマである難民の話などを始め、興味深いものがいっぱいです。


社会のいろんな問題について、ある程度いろいろ考えている人々が足を運んでくるわけなんだけど、皆すごく上品な、生活に余裕のありそうな人たちがほとんど、たとえば社会の問題について語られるときも、それを聞いている人々は、まるでそういった問題とは無縁と思われるのですね。

それで、アントナン・アルトーがメキシコに行ったときの話を思い出してしまった。

メキシコを理想郷と思って出かけたのに、彼を歓迎した人々は、メキシコの≪欧州人たち≫であって、その皮肉に失望した、という話。

私は別にいいとか悪いとか言いたいのではなく、この、絶対交わることのないかもしれない二つの世界のズレみたいなもの、これっていったい何なんだろう、なんて思ったわけです。

うまく表現できないのがはがゆいけど・・・。
というわけで、この感じる「ズレ」ってのを、忘れないうちに書いておこうと思ったわけです。

(追記・ これって問題抱えている人と抱えてない人の間のズレっていうんじゃないです。それぞれ自分自身のなかにある考えることと生きることのズレみたいな感じか…。)


さて、話は変わりますが、さっきTBSラジオのセッション22をネットで聞いていて、日本で定時制高校が減らされる、ということを知りました。

なんだかこういう「貧しい」話がいっぱいですね・・・。
残念なことです。

上述した王立アカデミーもそうですが、ベルギーにはいろんな学校があって、大人も子供も、お金をかけずにいろんな勉強ができます。
私は美術学校に夕方通って、デッサン、油絵、BD,版画、焼き物、美術史などを習いました。
フランス語も、いきなり実地でおしゃべりはできるようになったものの、ちゃんと文法や書くことの勉強はしていなかったので、子供たちがある程度大きくなってから、ちゃんと書くことを学ぼうと、学校に通いました。

うちの子供たちは、小さい頃から音楽アカデミーで、ピアノ、バイオリン、チェロなどを教わりました。
おかげで3人とも大の音楽好き、長女などそのおかげで大学では音楽学を専攻したほど。


なんだか、「ほらみて、いいでしょベルギー」みたいな、いやらしい、感じの悪い話ばっかりしているようで、我ながらいやになっちゃいますが・・・。