第2次大戦中のブリュッセル王立コンセルヴァトワール

 今日で2月もオシマイです。

今日から少しずつお天気も傾いていくそうですが、2月とは思えない暖かい良い天気が続きました。

一昨日は20度を超え、「気象台始まって以来の記録」をさらに更新。

ふつう2月といえば、冬を越すエネルギーも尽き、ああ、もう勘弁してちょうだい、って感じで、寒さにうんざりする時期だというのに、今年は元気満々です。

これって異常だから不気味だったりもするのだけど、とりあえず青空を楽しもうではないか、と思っちゃいました。

ニュースでも「冬なのに春」というんで取り上げてましたが、インタビューに答える人たちも、私と同じく、「とりあえず良い天気を楽しみます」と言ってて、みんなおんなじ気持ちね。

 

というわけで、またまた記事更新。

というのも、一昨日聴きに行った王立コンセルヴァトワールでの講演がとても面白かったので、わすれないように記しておきたくて。

 

第2次大戦中のコンセルヴァトワールについての話でした。

興味をそそられたので、行きたいとはずっと思っていました。

(これも入場無料、しかも事前予約も必要なし、というもの)

まったり過ごす夕方は家を出るに少しエネルギーが必要なところ、ひとりだったらまたまためんどくさくなったかもしれないのだけど、ちょうど数日の予定で日本からやってきたC子さんも聴きに行くというんで、久しぶりに会えるね、というのがよいモチベーションになりました。

C子さんはベルギー音楽研究者、こちらの自由大学に研究員として来ているときに、音楽学専攻の学生だったうちの長女くんと仲良しになった若者です。

講演はものすごく興味深いものだったので、行ってよかった。

C子さん、ありがとう!

 

 www.conservatoire.be

お話はコンセルヴァトワールの図書館の館長さんによるものでした。

図書館には、当時のいろんな文書・手紙などが全部残されていて、それらを読むことでいろんな事実が明らかになっているのでした。

講演は、1941年、ベルギーを統治していたナチから「ユダヤ人学生をリストアップせよ」と命令されたことから始まり、解放後のコンサートに至るまでの話で、話される内容の時期に合わせた選曲、あるいは実際その時期に行われたコンサートの曲を、合間合間に音楽院の学生たちが演奏するという構成でなされました。

 

ベルギー人作曲家Alex de Taeye の Douleur

www.youtube.com

当時の学長のお兄さんである作曲家Joseph Jongen のDeux pièces en trio, Op.80

 

www.youtube.com

ベートーベンのエグモンド序曲

www.youtube.com

その次が Elgarの Pompe and Circumstance, Op.39だったけど、聴いたのと同じ規模のビデオが見つからないのでパス。

そして最後がガーシュインのパリのアメリカ人、これも同様にパス。

って、上に貼り付けたエグモンド序曲も、当日聴いた規模とはちがうんだけど、これは外せない、と思ったので。

エグモンドは、フェリペ2世統治下、オルヌ伯爵とともにブリュッセルのグランプラスで、反逆のかどで見せしめのように首をはねられた伯爵さま。

ナチ統治下で行われたコンサートでは、反体制の象徴のようなこの曲に、ナチは怒りまくったそうです。

 

強制連行されたユダヤ人学生たちのその後、亡くなった子もいれば、収容所で演奏させられたことで生き残った子もいる。

生き残ったヴァイオリニストの女の子は、ヴァイオリンの弦が切れると自分の命もオシマイなので、ずっと恐怖を感じていたそうです。

 

ありとあらゆる学校から締め出された子供たちのために、ユダヤ人子女のための学校を創設する計画もあったそうだけど、これは実現せず。

 

当時の図書館司書の女性は、レジスタント活動を行っており、学生たちが強制労働に送られることを免れられるように手伝い、重要な楽譜等をドイツ軍から守り、また、レジスタントやユダヤ人家族を図書館でかくまったりもしていたとのことでした。

そこで働く人しか知らないもう一つの出入り口を、うまく使ったそうです。

こういう風にひそかに抵抗活動をした人もいれば、ナチに協力した人もいたわけで、終戦後その罪を問われた人も内部にはいました。

 

この講演は、数年前に行われた、音楽学者たちによる研究の一部です。

それって本になっているので、ほしいな、と思い、それをC子さんに言ったら、

「Iちゃん(←うちの長女くん)もこの研究の一員だったから、その本は持ってると思います」との返事。

あ、そういえば、一時期、大戦時のベルギーにおけるキャバレーの音楽活動についてなんか書いていたな、と思い出した次第。

そのときは、へえ、おもしろい研究やってるじゃん、と思ったのみだったダメな母親…。

検索したら、こんな記事がありました。

www.rtbf.be

Au revoir les enfantsを観たばかりだったんで、講演の話もとてもリアルに迫りました。

レジスタント活動をした図書館司書さんをひとり取り上げただけでも、小説1冊、映画1本に値します。

 

今まで王立アカデミーの講演しかチェックしてなかったけど、定期的に行われているコンセルヴァトワールの講演も、しっかりチェックしなければ、と思ったことでした。

 

せこいことばかり言って恥ずかしいけど、無料というのがありがたい。

お金がなくとも文化的生活ができる、ということですもんね。