眼のはなし

1年のうち一番日の長いときです。

あと数日で、また少しずつ日が短くなっていきます。

ベルギーでは夏至を過ぎるとうつ病が増えるんだそうです。

この国で暮らし始めた頃は、日の長さの変化にはただ驚き、冬は「日が短いなあ」そして夏は「日が長いなあ」と思っていただけでしたが、慣れてくると私も、冬至には「ああ、これから少しずつ日が長くなる」と喜び、夏至には「またこれから少しずつ日が短くなるのか…」とうんざりするようになりました。

 

3月の末から、ブログの見出しをいつも「コロナ危機@ブリュッセル」としてきたけど、もうそれはヤメにします。

もうコロナ込みの生活なのは大前提なので、わざわざ見出しに持ってくるのがアホくさくなってきました。

 

先週の日曜日、3女クンがレオくんと一緒にうちに顔を見せにやってきました。

肘を骨折した右腕はギブスをしていましたが、もう今週は取れているはず。

眼も開かないほど腫れていた顔の右半分も普通に戻り、欠けた1本の歯は、救急隊員

の方がちゃんとキープしてくれたのをもらっていたので、ちゃんと歯科医がくっつけてくれました。

縫った唇も抜糸が終わり、よーく見ないと縫ったとはわからない。

 

怪我した彼女を見舞うことなく自宅に呼びつけたみたいですが、レオくんのママのところに食事に呼ばれたついでに立ち寄ってくれた次第。

私も呼ばれたのだけれど、もう本当にうちを出るのがイヤでしょうがないので、丁重にお断りしたのでした。

 

3女クン、このコロナ騒ぎの中、大学のマスター過程を終了、あと論文を仕上げてオシマイです。

あれ、もう終わりだった?と驚くノンキな私。

あと1年あるかと思い込んでいましたから。

月日の経つスピード、速すぎ。

 

うちの子供たちは3人とも歯並びがとてもよくて虫歯もなく、歯医者がいつも「ベルギーでこれだけの歯の人は6%くらい。歯磨きのコマーシャルに出ていいくらい。」と褒めてくれるほどだったんでちょっとかわいそうだけど、ヘタすりゃ死んでもおかしくないくらいの事故だったのに、これで済んだのだからヨシとしないといけませんね。

(歯医者の言う6%という数字が、具体的すぎておもしろかった。)

 

それでもやはりおバカな母は、歯が欠けるなんてかわいそうで、かわれるものならかわってやりたい、なんて思ってました。

そしたら彼女の事故の数日後の朝、口の中で何かコロコロするんで目覚めたら、なんと歯でした。

左上の犬歯です。

実はこの歯、3女が生まれたすぐ後に神経を取っちゃったやつで、数年前に歯冠をしたもの。

芯になってた自分の歯が折れちゃった、ということでした。

神経取ってたんで痛くもかゆくもなかったんだけど。

歯冠自体は飲み込むことなく無事だったんで、歯医者で芯を新たに作ってもらい、昨日なにごともなかったかのように落着しました。

新たに歯冠を作る必要がなかったので、全部で150ユーロで済みました。

うち払い戻しもあるし、結局100ユーロもかからないくらいかな。

よかったあ…。

 

3女を出産したすぐ後、左の鼻翼の付け根のところがわずかに腫れ、押すと痛い。

これは歯から来てるな、と思って歯医者へ行くと、やはり左の犬歯が死にかかっていて炎症を起こしていると判明、神経を抜いてきちんと炎症を抑える処置をしました。

だから今回欠けた歯は、3女クンの年齢と同じだけ枯れ木状態だったものです。

お産自体はタイヘンな人に比べるとずっとラクな方なので、出産前後もあれこれ普通にやっていたんですが、そのときはしみじみ、お産って、たとえ自分では大丈夫なつもりでも、やはり体を張った大きなイヴェントなんだなあ、と思ったことでした。

 

お産といえば、最近この国の法律で、産休がさらに6週間だったか延びたはずです。

もともと9週間(ほとんどの人が全て産後に取ってた)だったところ、産前分にもと延び、延びた分は、全部産前に取ろうと、一部あるいは全部を産後に取ろうと自由だ、と新聞で読みました。

 

 

と、見出しは「眼」なのに「歯」の話をダラダラと書いちゃいました。

 

最近は日本のニュースをあまり読みません。

見たくもない醜い、悪霊でも取り付いてるんですか、みたいな人たちの顔の写真がドカンと載っているのに堪えられないので。

そのおかげで少し時間が増えたので、うちにある本を読んだりパラパラめくる時間が増えました。

 

何時購入したのか覚えていない L'Artiste comme modèle (モデルとしてのアーティスト)という写真集を見ていたら、アンドレ・マルローのポートレートがあまりにもカッコイイので、絵に描きたくなりました。

 

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ものすごくいい顔してます。

これってスペインの市民戦争に、航空隊編成して乗り込んだころかしら。

不安の微塵も感じさせない攻撃的な眼。

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描いてみると、カフカに似てる?なんて思ったのだけど、カフカの眼には不安の影があるからやっぱり違う。

 

 

眼といえば、うちにあるバタイユの L'histoire de l'oeil (眼球譚)、装丁がかっこいいとうちの長女がプレゼントしてくれた本。

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眼は心の窓とは、よく言ったものですね。

 

 

追記・マルローのポートレートは1930年のもの。だからスペインの市民戦争より6年前のものでした。