最近たてつづけにコンフェランスでネオクラシシズムの話を聴いてしまって、特に好みではないにもかかわらず、ジャック=ルイ・ダヴィッドの作品をまた観たくなり、王立美術館に行ってきました。
引き籠り生活の中、買い物に行く以外でうちを出るのは0階(日本でいうところの1階)にある郵便受けを見に行くこととゴミを出しに行くのみ、という歩かない生活についての反省もあり、まあまあのお天気だったので歩いて行ってきました。
普通に歩いて30分くらいの道のり。
ありがたい友の会カードのおかげで、散歩がてらにちょっと、なんて贅沢もできるのである。嬉しい。
美術館では、Covid-19対策で動線が定められているので、観たい作品が置いてある場所はわかっていても、ひゅーんとそこに直行するわけにはいかないところがじれったかったですけどね。
ジャック=ルイ・ダヴィッドの作品は、私がベルギーに暮らし始めた頃は、近代のセクションに置かれていたのですが、その後古典のセクションに移動されました。
そういうわけでグルグルと目的地に到着したので、途中でいくつかフォトなどを撮ってしまった。
私の好きな作品。
作者不明だけど、描かれた子供の服から、16世紀のネーデルランドの画家であることは間違いないらしい。
光の関係でちゃんと撮れませんでしたが(って、単にヘタクソなだけ…)、子どもがなんとも言えない表情をしてます。
手に持っているのは死を象徴する死んだ小鳥。
子どもが初めて死という事実に直面した時の表情ですかね?
そう思うと、哲学的だなあ、と思ってしまう。
クエンティン・マサイスの≪両替商とその妻≫
この人はアントワープで、ルーベンス以前では最も偉大な画家さんです。
人柄もよかったらしい。
カルロス5世の育ての親、彼の叔母さんであるマルグリット・ドートリッシュのお気に入りの画家さんだったので、デューラーが滞ってる年金の支払いを催促にネーデルランドに来た時も、マセイスに会ってマルグリット・ドートリッシュに会うための仲介を頼んだりしてる。
こういうエピソード、人間味満載で、おもしろすぎてコーフンしてしまいます。
この作品についても以前arteでドキュメンタリーを観ました。
おもしろかったけど、記そうと思うとまた見直して確かめないと正確性に欠けるので、ここではパス。
で、これが観たくなった作品≪マラーの死≫。
この作品が置いてある大きな部屋には私ひとり。ぜいたく。
1793年7月13日午後7時15分、シャルロット・コルデに殺されたマラーです。
ジャック=ルイ・ダヴィッドは当時フランスで最も有名な画家だったというだけでなく、ジャコバン党員でマラーの友人でもあった。
(ちなみにふたりともルイ16世の処刑には賛成票を投じたそうです。)
以前視聴したタッソー夫人のドキュメンタリーで知ったんですが、当時処刑された貴族たちの首は、その頃はパリにいたタッソー夫人のもとに運ばれ、彼女がそれを見ながら蝋人形にしていたそうで、マラーも亡くなった後すぐ彼女の下へ…。
ダヴィドはその蝋人形をモデルにこの作品を描いたと、そのドキュメンタリーで話されていました。
ナポレオン失脚の後、ダヴィッドはブリュッセルで亡命生活を送ったので、この作品はブリュッセルにあるんです。
彼のお墓もブリュッセルにある。
そして彼の人生最後の作品。ブリュッセルで描かれました。
もうこんな感じになると、全く私の好みではないのだけど、ネオクラシシズムとは単なる外見のスタイルではなく、そこに公共に関する思想があるんだ、なんて説明を聞いてしまっていたので、しみじみ見入ってしまった。
軍神マースの武器を解除するヴィーナス。
目的を果たしたのでホッとして、この部屋のすぐそばにあるルーベンスの部屋へ。
ここでも広いスペースを私ひとりで独占。贅沢三昧。
ルーベンスがイタリアから戻ってすぐの頃、まだ彼の特徴の輪郭がちょっとフルフルしているものとなっていない頃の方が私は好きなんですが、たとえばこれ。
描かれた年号は記されてなかったけど、たぶんイタリアから戻って間もないころ。
東方の三博士がイエスのもとを訪ねたところ。
マリア様の服がちょっとはだけてるんです。
授乳したばかりだからだそうです。マリア様がとてもかわいい。
ルーベンス独自の輪郭フルフルの大作。
まるで栄光に向かっていってます、って感じです。
美術館を出るにも動線の指示を守り、この階段を下ります。
ヤン・ファーブルの作品。
階段を降りると、ベルギー初代王様、レオポルド1世。
ナポレオンが欧州で一番イケメンだと評価してたらしいですよ。
そして2代目の王様、レオポルド2世。
当時の世界観が現在とは異なることを考慮しても、やはり好きになれない王様だ…。
ひどいピンボケですが…。
このスペースを抜けて、以前もブログにアップした大きなホールに出ます。
今回はそこにおいてあるこの作品を撮ってきた。
ブリュッセルに女の子のためのライシテの学校ができたお祝いパレード。
王宮前です。レオポルド2世がいます。
一番前列、ピンクの帯を巻いた女の子、一番かわいく描かれているんだけど、この画家さんのお嬢さん。
うちの子が主役、ってやつ?!と笑っちゃいます。
先生たち、喪服みたいな服装ですが、この時代の女の先生、生徒たちが自分の子供、ということで、自分の子供を持つことは許されなかったんだそうですよ。
美術館を出ると虹が出てました!
ジャック=ルイ・ダヴィッドだナポレオンだと書いていて、うちにあるこの本を思い出しちゃった。
この本、5年くらい前に、ゲントの聖バーフ大聖堂のショップでゲットしたんです。
ときどき司教様の本棚から売りに出されるものがあり、これもそのひとつ。
うわーい、掘り出し物だ!と嬉しくなったことです。
ナポレオンの政権下で美術担当だったドミニック・ヴィヴァン・ドゥノンに関する研究論文。
ちゃんと読んだわけではないんですが、この本に、ナポレオンは美術にはあまり関心なく、デカければいい、みたいな人だったって書いてありました。
おもしろい。笑
ルーヴル美術館にあるダヴィッドによるナポレオンの戴冠、デカいですもんね。