クリスチアン・ドートルモン展

昨日は久々に王立美術館へ行ってきました。

コロナ禍に突入して以来籠ってばかりだから、健康のために歩こう、そう思って去年まではうちから歩いていましたが、もうすでにそういう気持ちも消え失せ(苦笑)、トラムで往復。

 

前回記したように、今サハラ砂漠からの熱い空気が流れてきているんで(スペインや南仏は40℃超え)、今週は気温がぐんぐん上昇するということなのですが、昨日はまだ20℃を少し超えるくらい、午前中出かけたのでまだ15℃くらいで快適でした。

こういう快適なお天気のもとでは、ミュージアムに入ろうとする人は少なく、しかも平日、ガラガラなのでゆっくり鑑賞できます。

私にとっては最高のミュージアム日和でありました。

(土曜日が気温はピーク、ベルギー中で30℃を超えるという予報)

 

ドートルモン展は期待どおり、とてもおもしろかったです。

フォトを貼り付けておきます。

 

美術館の入り口。

 

ホールには校外授業の子供たちがたくさんいたんでギョッとしましたが、マグリット美術館でのワークショップだったようで、私の鑑賞タイムが損なわれることはなかったです。(こんなこと言ってごめんね>子供たち)

6月、年度末の試験が終わると、夏休みに入るまで、映画に行ったりピクニックに行ったり、こうやってミュージアムを訪ねたり、といった校外での活動ばかりになります。

 

特設展入り口前には、やはりコブラのメンバーだったアレシャンスキーの作品が何点か置かれていました。

ここには普段はTour&Taxi家(16世紀郵便業をスタートし、19世紀までその業種を独占していたファミリー)所蔵のお宝が数点置かれているんですが、今回は違いました。

 

 

父親が法律家で作家、母親はジャーナリスト。

エクリチュール」に囲まれて育った人です。

小さなころから詩を書いていた。

«ドートルモン»を本人は Dotremont と書いていましたが、ホントの苗字はd'Otremont です。

小文字のde(母音の前だとd')がつくのは貴族、それを嫌ってのことだったらしい。

 

彼がエクリチュールというものをどう捉えているか、それがビンビン伝わってくる展覧会でした。

大満足。

 

結核に苦しめられた人です。

苦しみながらも、病すらアートにしちゃった。

こういう感性、ものすごく好きです。

 

↓ この作品の下部に記されていることが好きだったんで、フォトを撮り、後で拡大してちゃんと読み直して訳そうと思ったけど、拡大しても読めないし、情けないことによく覚えていない…。

また観に行くつもりなんで、そのときちゃんと読み直そうと思います。

 

エクリチュールというのはジェオグラフィーだ、みたいなこと言ったらしい。

おもしろいと思ったけど、これも正しく思い出せない…。泣

 

書かれる(描かれる)ものがあれば、書かない(描かない)ではいられないのね、と思いました。

 

出口前にはまたアレシャンスキーの作品が置いてありました。

 

 

私と同時に入場した方がひとり、高齢の男性でした。

会場にはずっと私たちふたりだけで、ほぼ同じペースで観て回っていたんですが、私がヴィデオを座ってみている時、隣にいらっしゃって英語で「これはチャイニーズですか?」と訊ねられました。

書かれているものがチャイニーズか(漢字か)という質問だろうとは思いましたが、いま一つ曖昧だったので、その質問の意味をちゃんと確認しようとしたら、「私は耳が聞こえないのです」とおっしゃった。

見た目がアジア人なので、何語で話しかけるべきかわからない場合は英語で話しかけてくる、というのはよくあることです。

きっとフランス語で大丈夫だろうと思い、手持ちの紙に「私はニッポン出身ですが、同じ画材と道具を使います。でもドートルモンが書いているのは漢字じゃありません。」と仏語で書いて見せると、とても嬉しそうににっこり笑い「ありがとう」と。

コブラのメンバーたちより少し年下、というくらいのお年の方でした。

 

 

 

鑑賞後、マグリットミュージアムのショップへ。

今まで気づいていなかったけど、本棚に ceci n'est pas xxx というタイトルの本がたくさん並んでいました。

このタイトルにする気持ちは、私にもとてもよくわかります。

10年くらい前、金沢の呉服店の社長さんから古着のキモノをたくさんいただいたことがあります。

そのキモノ、日常の気軽なモノとしてこちらで広めようと思い、友人アーティストたちとちょいと活動したことがあります。

(ここで絶対強調したいのは、ニッポン文化ってすごい・素晴らしい、という発想では全くない、それどころかその真逆ということ。その他いろいろの美しいもののひとつ、ということで紹介したかった。)

そのとき、ceci n'est pas un kimono ってのをキャッチフレーズにしちゃいましたから…。笑

 

 

哲学者たちだけでなく、アーティストたちも、人を人足らしめているところの「言葉」と向きあってきたのだなあ、と感動を覚える展覧会でありました。

8月初頭まで開催されているので、まだあと何回も鑑賞に行けます。

嬉しい。

 

 

 

さて、話は変わって・・・

 

一昨日だったか、ミック・ジャガーがCovid発症ということで、アムステルダムで予定されていたコンサートが中止、というニュースがありました。

症状は軽い風邪だそう、7月に予定されているブリュッセルでのコンサートは、今のところ中止されることはないようです。

www.rtbf.be

 

 

今日はこのフォトを貼ってオシマイにします。

 

Jean Dieuzaide (Français, 1921-2003), L'addition, 1955

誇らしげに足し算の答えを見せる男の子。

数字が絵になっているし、ドートルモン的に言えば、一篇のポエムですね。笑