ペルスペクティヴィズム、ラーケン墓地ツアー

前回から数日経過。

その間のことをメモ。

 

もう仕事から解放されている頃だから、そう思って申し込んでおいた久々の王立アカデミーでの講義。

タイトルは「社会科学における真実」

先生はコレージュ・ドゥ・フランスから招待されたディディエ・ファサン氏。

fr.wikipedia.org

内科医→感染症医→文化人類学者→社会学者 という経歴で、社会問題に関して「アンガジェ」の人。

国境のない医師団の副プレジデントもやっていた。

医師として社会的保護を受けられない患者たちに向き合ううちに、こういう経歴となったようです。

(この方の弟さんも社会学者で、セクシュアリティを中心にした研究者、極右思想と闘う人でもある。)

 

この講義、二日間だったんだけど、二日目に長女からSOS、それを優先したので、2回めは聴いてません。

 

この方、国境に赴き、そこにやってくる亡命者たちと話し、そこでコントロールに携わるポリスと話し(「インタビュー」ではなく「対話」です。)、そこでの様子を観察してきた。

 

文化的背景や経験を異にする人々にはそれぞれの真実があり、それは時には矛盾するものなのだけど、どちらが正しくどちらが間違っているというような問題ではないのです。

1回めの講義では、観察した例をただ見てきたとおりに描写されましたが、それさえも「私というフィルターを通したものだ」とおっしゃっていました。

 

2回めにきっと「コンクルージョン」という形でまとめられたと思うのだけど、聴いていないのでメモはここまで。

ただタイトルから、ペルスペクティヴィズムの話だということは想像がつくのであります。

「それぞれの視点・観点」による「それぞれの真実」を、どれも切り捨てることなくどうやって再構築していくか、という話だろうと。

 

これって、いつも私が感じている「翻訳の不可能性」とも関わっているなあ、と思った次第。

 

 

昨日土曜日は、しばらく前にブリュッセル市から招待状が届いたので、これも「もう仕事から解放されている頃だから」と申し込んでいたイヴェント「墓地の春」、ラーケンのノートルダム教会横の墓地をガイドの案内で歩いてきました。

今年で3回め(フランスでは10年前からやっている行事)で、今年のテーマは「墓地の女性たち」。

ガイドを務めてくれたのは、Epitaafというグループのメンバー。

このグループは、1984年に創設された、墓地とそこに眠る人々、その彫刻に関心を持つ人たちの集まりです。

(私もお墓が大好きなので仲間に入れてほしいけど、サイトを見る限り蘭語話者の集まりみたいです。たぶん皆仏語を解すると思うけど、集まりの中での会話は蘭語でしょうね…。)

www.epitaaf.org

 

昔はどの教会も横に墓地があったのだけど、手狭になった・衛生上問題あり、ということで、19世紀末には全てなくなりました。

そういう法律が作られたからなんだけど、そんな中、王家の霊廟もあるラーケンの墓地だけがその法律を免れ、今も教会横にあります。

 

 

この女性たち ↓ のお墓を訪ねた。

ベルギー王国の最初の王妃、ベルギー独立前にオランダのウィリアム2世の妃となるべくブリュッセルにやってきて、そのままブリュッセルにとどまった女伯爵、男性にのみ開かれていた音楽院を女性にも開いたピアニスト、オペラ歌手、女性として最初の法曹になった人、それまでカトリック教会にのみ行われていた女の子のための教育を、男の子たち同様にライシテによるものへと開いた人、女性としてベルギーで最初の大臣になった人、社会主義者として活躍した人、そういう女性たちです。

闘った女性たち、です。

 

↑ に書いた順番にフォト。

 

Reine Louise-Marie des Belges

 

Marie-Henriette van Maldeghem

 

Marie Pleyel

 

Maria Malibran

(ここでは彼女が歌った曲をオペラ歌手さんが歌って披露。)

 

Marie Popelin

ここは地下のギャレリー、ここには15世紀の楽曲を演奏しているミュージシャン(フルート、ヴィオラダガンバ、歌)がいました。

 

Ghemar 姉妹

 

Margerite de Riemaecker-Legot

この方が議会に立候補し当選したときは、まだ女性に投票権はなかった頃。

立候補はできたというのがおもしろい。

 

Emilienne Steux

メンバーの方たち、この墓石を見つけるのにものすごく苦労されたようです。

 

男性はまるでヒーロー、女性は泣く係。

 

ここには、ベルギーに縁の深いロダンの「考える人」もいます。

 

墓地の入り口横には、墓石の彫刻を中心に活躍した彫刻家のアトリエがあり、今回のような特別な機会にのみ公開されるそうです。

 

3代にわたる Ernest Salu

fr.wikipedia.org

アトリエの中

 

 

 

 

 

さて、2週間後には選挙です。

 

新聞やTV・ラジオのニュースでは、常にめいっぱい取り上げられ話題の中心ですが、煩い街頭演説や選挙カーの騒音などは一切ないのがありがたいベルギーでの選挙。

 

市民に一斉に発送された投票券、私にも届きました。

 

EU議会に関しては、もう誰に投票するか決めていますが、地域政府に関しては人でなく党にと考えており、どの党にするかまだ迷っているのである…。

 

今からこれを視聴する。

女性にも投票権が与えられたのって、ビックリするくらい最近のことなんだと、こういう話題が上るたびに再確認しちゃう。

当たり前と思っていること、実は当たり前じゃなかったことがあり、皆が闘って「修正」してきたのよね。

auvio.rtbf.be