ボッシュ展を観たこと、その他いろいろ


一昨日ボッシュ展を観てきました。
ボッシュと私は書きましたが、いろんな書き方があるみたい。
フランス語ではジェロームボッシュと言うんですが、日本語で書かれるときは、ヒエロニムス・ボスと書かれるみたいですね。

彼の生きた街、's-Hertogenbochで、死後500年を記念しての、めったに観られない大規模な展覧会です。
この街の名前ですが、オランダ人の発音は、私の耳には«シェルトヘンボシュ»と聞こえるので、そう記します。

オランダ語がちっとも覚えられないのは、綴りを見てもどう発音するのかわからないのと、音で聞いても綴りが想像できない、というのが大きい。
この街の名前にしても、アポストロフやハイフンがあって、脳内に????が駆け巡っちゃうんですよね。(笑)
ブリュッセルは、オランダ語とフランス語と両方が公用語で、すべての表示が二つの言葉で記されています。
だから、単語を見ると、あ、フランス語のこの言葉はオランダ語でこうなのね、というのは少しずつ分かってくるんだけど、ちゃんと発音がわかっているわけでなく、毎回勝手に脳内で発音しているんで、音に出していう時でも毎回適当(笑)、私には難しすぎる・・・。

展覧会初日のニュースで、もうチケットが10万枚売れた、と言っており、チケットをその場で買おうと出かけた友人が、入られないで戻ってきたり、ということもあったので、あらかじめオンラインでチケットをゲット。

ブリュッセルを10時ちょっと前の電車で出発、12時過ぎ到着の予定で、チケットは14時〜15時に入場のを選びました。
なんといってもベルギーの国鉄、ちゃんと予定時間に到着するとも限らないので、しっかり余裕をもって、という考え。
もし時間通りにたどり着いたら、ランチでもして、街歩きして、余裕で入館すればいいし、これだけ余裕があれば、ちょっとやそっと国鉄が遅れても、なんとか時間内に入場できるだろう、と。

フランクフルトにデューラー展を観に行ったときも、
http://d.hatena.ne.jp/shohoji/20131106/1383741735
ニースにジャコメッティ展を観に行ったときも、
http://d.hatena.ne.jp/shohoji/20101024/1287929335
その他、数え上げたらきりがないくらい、国鉄や飛行機が思い通りに動いてくれない目に遭ってきたので、「備えよ常に」なのであります。(笑)

ブリュッセルの南駅からアムステルダム行きに乗り、アントワープの次の駅、オランダに入ってから最初の停車駅であるローゼンダールで乗り換えることになります。
南駅でアムステルダム行がなかなか来ない、結局30分ほど遅れて出発、電車を待っている間、ローゼンダールで乗り換える電車の時刻はわかっていたけど、どこ行きなのか不明だったので、やはり駅のホームで同じ電車に乗り込むべく待っていたオランダ国鉄の人に聞きました。
まず、乗り換え時間は10分足らずだったので絶対間に合わないし、乗り換えるべき電車は何分毎にあるのか、そしてどこ行きか訊ねました。
30分に1本あるよ、とのことで少しホッとしましたが、乗るべき電車はズヴォッル(そう聞こえた・笑)行き
とのこと。
その「ズヴォッル」という地名に、私の目が点になったのを見て取った国鉄の人々、オランダとベルギー合わせて5人でもってひとしきり笑い、「1番線のBで乗ってね」と。

さて、30分遅れてやってきた電車、なんと、アントワープを過ぎたあたりでピタっと停車、ビクとも動きません。ああ、やっぱりこうなるか・・・。
しばらくして、「今連絡が入り、エッセンとローゼンダールの間が現在不通です。緊急対策としてエッセンで止りますから、そこから臨時バスに乗り換えてローゼンダールに行ってください」と車内放送。
ひょえーと思いましたが、動かないものは動かない、エッセンで降ろされバスに乗り込むことに。
乗客みんなが4台のバスに乗り込むのにかなり時間がかかりました。

なんとかローゼンダール駅に到着、予定より1時間遅い電車の発車まで3分ほどしかありませんでしたが、ここで聞いておいた「1番線B」という情報のおかげで、なんとか無事乗り込みました。聞いておいてよかった。
ズヴォッルというのは、Zwolleと書くというのも学んじゃった。めでたい。


そういう経過でシェルトヘンボシュに到着、もうランチの時間はないのでまっすぐ美術館へ。

シェルトヘンボシュのマルクト広場です。

到着した時、私のチケットの入場時間までまだ15分ほどあったのですが、係の人が「もう入っていいよ」と入れてくれたので、中に入ってから「腹が減っては集中できない」とコーヒーとクッキーをいただき、無事展覧会を楽しむことができました。



噂に違わず、かなり充実した展覧会で、全部を鑑賞するのに3時間近くかかりました。
あれだけの作品をまとめて観られる機会は、ほとんどないだろう、と思います。
デッサンも数多く展示されており、こういう機会は滅多にないでしょう。
フクロウのデッサン、カタログの写真で見るより、本物の方が圧倒的に素晴らしかった。
フクロウは、ボッシュの時代には不吉なものだったそうです。

タブローに描かれた男たちや女たち、未だに解明されない謎にも満ちています。

ボッシュのファン、多いですね。
平日にもかかわらず、かなり多くの人がいました。
あのイマジネーション、あのモンスターたち、他の画家にはみられませんものね。
コピーが多く制作されたのもうなづけます。

絵について私の感想を書いてもつまらないので、プラクティカルな情報をひとつ。

オランダはベルギーに比べミュージアムの入場料がけっこう高く、倍くらいします。
でも、ミュージアム・カードというのを購入すると、購入した日から1年間、オランダにある300以上のミュージアムにフリーパスです。
このカード、去年の秋の値段が59ユーロでした。
3つか4つに入場したら、もうモトが取れます。お勧めです。

今回の入場料、本来の入場料が12ユーロですが、特別展ということで10ユーロ増し。
私はミュージアム・カードを持っているので、差額の10ユーロを払うだけで済みました。

帰りは電車の遅れもなく、無事帰宅。
でも、国境を超える国際列車、なんでベルギーでだけ遅れるのだろう。
ボッシュの絵ぐらい謎であります。



さて、今日は、長女クンがランチを奢ってくれるというんで、出かけてきました。
オーガニックでベジタリアンのビュッフェで、ワインを飲みながら、二人で楽しくランチ。

今彼女、友人と一緒に、ちょっとしたドキュメンタリー・フィルムを作っていて、その話から髭のある聖女の話になりました。
以前プラハで髭の聖女を教会で見て、けっこうキョーレツでしたが、今回の展覧会で見たボッシュの絵にも、彼女を描いたものがあります。
その絵の聖女の髭は、後に消されたらしいとの解説でしたが。(追記・ 右の記述は間違い。消されたのは髭ではなく、最初の注文主と思われる人物の姿。髭はかすかに描かれているのが認められるようです。)

この聖女です。
https://fr.wikipedia.org/wiki/Wilgeforte

この聖女、フェミニズム的な視点から見ると、なかなかおもしろいのではなかろうか。



夕方は映画『キャロル』を見てきました。

映画館に行こうとバスを待っていたら、スーパーの買い物袋を提げた80歳くらいのおじいさんがやってきて、54番のバスはもう行っちゃったか、と聞きます。
私もそれに乗るんだけど、まだ来てませんよ、もうすぐ来ると思う、と私。
そしたら身の上話を始めたんですね。
実は、もうショックで死んじゃうんじゃないか、と思うようなことが自分に起きた、2年半の婚約期間の後結婚し50年以上連れ添った妻が、離婚を宣言したのだ、とのこと。
ひとり身になって3か月、だそうで、子供を育て、親も看取り、孫の面倒もみて、模範のような妻だったのに、と。
どう思う?と言うんで、彼女は一人で生きたいと思ったのでしょう、と言うと、「そのとおり」、いろんなことを責任もってやり遂げて、今からは自分の人生を生きようと思ったんでしょう、と言うと、「そのとおり」と。
「彼女の行動をもっともだと思う?」と言うんで、「はい、とてもよく理解できます」と答えたら、そうですか、ありがとう、と言ってました。


映画ですが、ケイト・ブランシェット、大好きなんです。
すごく美しいと思う。

映画のラストシーン、彼女の表情に感動してしまった・・・。


追記
ボッシュによる髭の聖女Wilgeforteの絵はこれです。